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「ひしおもろみ」は、我々が見逃していた新感覚調味料です!

「ひしおもろみ」ともろみ味噌は違う
いったいどれくらいの人が「ひしおもろみ」を知っているのだろうか?私は、学校の講義でその商品を手渡されるまで聞いたことすらなかった。周りの人に「ひしおもろみって知ってる?」と尋ねても「知らない」と答える人ばかり。中には「もろみって麦みたいなものが入ったやつ?」と聞いて来る人もいた。彼女らが指す“麦みたいなやつ”とは、おそらくもろみ味噌のことだと思われる。居酒屋でよく見かける「もろきゅう」(もろみキュウリ)が有名だからそう思ってしまうのだろう。では、「ひしおもろみ」とは、たまに口にするもろみ味噌とはどう違うのだろうか。そしてどんな味がするのだろう。
まず、もろみ(醪)とは、醤油や酒などを造るために醸造した液体の中に入っている、原料が発酵した柔らかい固形物をいう。つまり「ひしおもろみ」とは、醤油を造る段階にできる醤油の素なのだ。ちなみにもろキュウなどに使われているのは、もろみ味噌で、それとは異なる。もろみ味噌は、醤油を造る方法と同じだが、製造した麹を醤油ほど多くない塩水や砂糖に漬けたもの。名称はもろみ味噌であるが、実際には味噌のもろみではなく、醤油を造る段階でできる「ひしおもろみ」でもなく、もともと食べる目的で製造したものである。味の違いとしては、「ひしおもろみ」の方が醤油の味が濃く、もろみ味噌の方は少し甘みがある感じがする。通常「ひしおもろみ」は、醤油粕として処理されてしまう。だが、近年では調味料として大いに活用できると見直されつつあるのだ。現に熊本県では「しょうゆの実」とか、「しょうゆの豆」などと呼んで調味料として使用されている実例が見られる。

酒のつまみを作る時にぜひ用いたい

「ひしおもろみ」は、見ためにも味的にも味噌のようなペースト状の醤油といったところか。最近は液体ではかけすぎてしまうことを懸念して粉末醤油に着目されがちだが、「ひしおもろみ」も同様、液体のようなかけすぎを防ぐ、いわば醤油の代用品として使えるように思ってしまった。例えば、寿司_、一般的には通常の醤油を用いるが、「ひしおもろみ」だとシャリまでその味が染み込まない利点が生じる。他には弁当の際にも利用価値が大。液体ではないので別の小さな容器もいらず、垂れ防止にもなる。天ぷらなどの揚げ物だってそう、サクサク感を損なわずに味わえる。
また、「ひしおもろみ」はダイレクトにつけたりするのみではなく、調理の際に用いるのにも便利だ。中でもオススメしたいのは、練り込む手法。パン生地などは液体状の醤油では水分量が変わると調節しづらくなるが、「ひしおもろみ」ならさほどでもなく、独自の使い方も可能だ。私は「ひしおもろみ」の濃い味がお酒とよく合うので、酒のつまみを作る際に使用すべきとお薦めしたい。今回、私達のAチームが作った「春巻きスティック」は、生地に薄く「ひしおもろみ」を塗っている。そうすることで口内で具材と混ざり合い、ダイレクトに醤油をつけたのとは違った風味になった。今回使用したのは、長芋、ミンチ、チーズである。チーズや長芋が「ひしおもろみ」の濃さをまろやかにしてくれるのだ。さらに春巻きは中身を替えることでアレンジも可能。飲みたいものに合わせてもいいし、作り方も難しくないので即席で作れてしまう。
食品ロスが大きな問題となっている昨今では、まだ使えるにも関わらずモノが廃棄されている。そんな中で「もったいない」というフレーズは世界的にも受け入れられているそうだ。「ひしおもろみ」は、通常廃棄処理されてもおかしくないものの一つであろう。それが湯浅醬油ではきちんと製品化されているのを誉めたくもなる。誰も知らないと言っていた「ひしおもろみ」だが、食品ロスが叫ばれる現状にあっては着目すべき品であることは間違いない。昔からあるものに目を向けて来なかった我々若い世代も悪い。でも、改めて目を向けたなら、それが新感覚の調味料たりえることがわかるだろう。

(文/大阪樟蔭女子大学 学芸学部 ライフプランニング学科 塚本悠希)

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