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魅惑の味を創造 世界が認めた「名脇役」

2011年8月9日

湯浅醤油(有)、丸新本家の新古です。
世界一の醤油をつくりたい 湯浅醤油有限会社 社長 新古敏朗のブログ-フジサンケイ 湯浅醤油1
世界一の醤油をつくりたい 湯浅醤油有限会社 社長 新古敏朗のブログ-フジサンケイ 湯浅醤油2
フジサンケイ ビジネスアイに2011年8月4日掲載されました。
魅惑の味を創造 世界が認めた「名脇役」
湯浅醤油
醤油(しょうゆ)発祥の地とされる和歌山県湯浅町。ここに、こだわりの一品を作る従業員6人の会社がある。社長が「この地の伝統と魅力を広めたい」と、創業130年という金山寺みその老舗から、醤油造りのために関連会社として「湯浅醤油有限会社」を立ち上げた。
親会社の「丸新本家」は、1881(明治14)年創業。同社専務で湯浅醤油社長の新古敏朗さんの曾祖母が、大豆や米、野菜などで作る金山寺みそを売り出し主力商品に。醤油も手がけたが、採算面などで割が合わず、昭和40年ごろまでに生産をやめてしまっていた。
が、新古さんが大阪の専門学校で学んでいたころ、湯浅町のことを周囲からよく聞いたという。「湯浅といえば醤油」「シラスがおいしい」…。地元を離れたことで初めて知った湯浅の魅力。若かった新古さんの心に「醤油を造りたい」という思いが芽生えていった。
◆頑固に売り続け
故郷に戻り、家業の会社に入って何年か経ったころ、湯浅の手前までだった自動車専用道路が南伸した影響で、国道42号沿いの土産物店の売り上げが激減。地域おこしのため、新古さんは途絶えていた醤油作りの復活を決意し、「湯浅醤油」を2002年に設立した。
そうして誕生したのが、今の主力商品の「生一本黒豆」。
「人と同じものを作っても埋もれる」と材料にこだわった。約1500年前に中国で編纂(へんさん)された、農業や醸造などを網羅した文献「斉民要術(せいみんようじゅつ)」に記されていたことにちなみ、国産の黒豆を採用。小麦は三重県産、塩にはミネラルを多く含む長崎県の五島列島の品を選んだ。
だが、720ミリリットル入りで3000円の高級品は当初全く売れなかった。02年夏に販売を開始したものの、在庫の山だけが積み上がった。社内からは「半額でいいから売って金に換えろ」と非難の声もあった。それでも新古さんは「これには価値がある」と頑固に売り続けた。
◆海外まで口コミ浸透
3年ほどたって転機が訪れた。「生一本黒豆」は口コミで広がり、料理がテーマの人気テレビ番組で紹介されたため大ブレーク。注文は殺到し、在庫は尽きた。驚きはさらに続く。07年夏、1人の外国人が突然訪ねてきて「工場を見学したい」と言い出した。言葉が分からず戸惑っていたが、よく聞いてみると男性はベルギー人のフランス料理シェフで、生一本黒豆を愛用しているというのだ。「大勢の仲間で、もっと使いたいから量が必要なんだ。少し仕入れ値を安くしてもらえないか」。そう言い残して帰っていった。
実はこの男性、ベルギーでは名の知れた料理人だった。海外でも「生一本黒豆」を購入する人が増えていることを知り合いの百貨店関係者から聞いたこともあったが、「ジーンズ姿なのでただの観光客だと思っていた。それはびっくりしました」と新古さんは振り返る。
ベルギー人シェフにとって、新古さんの醤油は「今まで使っていたのは何だったんだ」と言わせるほど高品質だったのだ。そんな味の魅力について新古さんは「特徴がありすぎると素材に勝ってしまうが、素材のいいところを引き出す『名脇役』に徹した点だと思います」。
世界中の優れた食品などを評価する「モンドセレクション」で生一本は06年から6年連続の最高金賞。その一方で「湯浅の醤油をもっと身近なものにしたい」。だからこそ、予約すれば蔵を見学できるようにした。夢は、着実に前進している。(藤崎真生)

蔵見学の問い合わせは((電)0737・62・2100)。

【会社概要】
▽本社=和歌山県湯浅町湯浅1464((電)0737・63・2267)
▽設立=2002年1月(「丸新本家」の関連会社として設立)
▽資本金=300万円
▽従業員数=6人
▽売上高=1億4800万円
▽事業内容=醤油、食品の製造・販売
□ ■ □
≪インタビュー≫
□新古敏朗社長
■地元愛し、究極追い求める“伝道者”
--会社の今の目標は
「湯浅が、醤油発祥の地であり、しかも“世界一”の醤油を生んだ場所ということを広く伝え、観光地としても国内外から多くの人たちに来てもらえるようにしたい」
--醤油蔵を見学できるようにしている
「せっかく湯浅に住んでいるのだから、地元の小学生たちが大人になったとき、故郷が『醤油が生まれた場所』と胸を張って言えるよう、地域の伝統を学んでほしかった。私の小学生時代には全国区の『有田みかん』については学んだが、醤油に関してはなかったから、という思いもある」
--オープンにすることで問題はないか
「企業として、お客さんが『見ることができない』状態にすることの方が問題。きちんと誰にでも見てもらえる形にすることが従業員の意識向上にもつながる。また、お客さんに製造工程を目にしてもらうことで、醤油がもっと身近な存在になると思う」
--海外での評価で何を感じたか
「ベルギーでは約10店がうちの商品を使っている。さらにモンドセレクションの受賞を通じて、醤油は日本だけではないことがわかった。これからは料理人以外に、一般の外国人にも正しい醤油の使い方がわかるように伝えていきたい。海外で寿司屋に入ると、多くの外国人がぎこちなく食べているように思う。解消してあげたい」
--無農薬大豆、無農薬小麦の栽培プロジェクトを進めている
「世界一の醤油を造ることが目標なので、味の追求に終わりはないと思っている。無農薬・無肥料のリンゴ栽培を成功させたことで有名な木村秋則さんの弟子、折笠農園の折笠健(ますらお)さんの協力で北海道の十勝平野で栽培を進めてきた。いまは仕込みも順調で、今秋には市場に出す予定だ」

【プロフィル】新古敏朗
しんこ・としお 日本分析化学専門学校(大阪市北区)を卒業後、1990年4月「丸新本家」入社。2002年、湯浅醤油を設立、社長に。05年には多彩な商品作りに取り組んだ功績から和歌山県知事技術賞を受賞。名刺に刻む“称号”は「醤油を愛するまじめな職人」。丸新本家専務を兼務。42歳。和歌山県出身。
≪イチ押し!≫
■6年連続の栄冠「生一本黒豆」
代表的商品といえるのが、高品質醤油「生一本黒豆」。6年連続でモンドセレクションの最高金賞に輝いているが、「醤油というジャンルで6年連続の最高金賞は初めて」(新古さん)という。
一方で親会社の「丸新本家」も負けていない。貴重な「たまり」を使った「九曜むらさき」でモンドセレクションの最高金賞を6年連続で獲得。金山寺みその製造過程で、野菜の水分が仕込み桶の上に「たまる」液体を素材に造る。これを調味料として改良するのは、現在の醤油造りのルーツという。
電話やFAX、インターネットでの注文も受け付けている。
フリーダイアル 0120-345-124
FAX     0737-63-5789
http://www.marushinhonke.com/
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